《しんぶん赤旗》

            2000.06.28.

 

中国の世界遺産、黄山を撮りつづけている写真家

ワンウーシェン

汪蕪生さん

 

一瞬も動きを止めない広大な雲海、雲間から顔をのぞかせる大小七十二峰。奇岩怪石、樹齢千年を超える松の木々・・・中国一の奇山、黄山(中国・安徽省)の雄大な景観との出合いが人生を決定づけました。「この感動を芸術という言葉で伝えたい」。フリーで活動するため八一年に来日。日本に住んで一心に黄山を撮り続けています。

四月から開催中の個展「天上の山々」 (東京都写真美術館、七月十六日まで、03・3280・0031)。縦横数bもの「写真屏風(びょうぶ)」をはじめ迫力あるモノクロの作品群。清浄な深山の気に満ちた、静寂の世界が広がります。

「これまでの展覧会と逢って、今回は若者たちの反響が強いんです。制服姿の中学生の二人連れ、就職活動中の女子学生が涙をポロポロ流し、『心が洗われた』 『吸い込まれそうに感じた』と握手を求めてくる。若者にみてもらいたかったのでうれしくて。一番の収穫です」。思いっきり声が弾みます。

来日後ゼロからの出発で、困窮、言葉の苦労、病気、自信喪失…と格闘の連続でした。「自信と夢を取り戻せたのも、黄山での仕事でした」。半年撮影したものを暗室作業に三年かける地道な積み重ね。「作品を通して人間の本当の幸せとはなにか、私たちは大事な

ものを忘れていないかを問いかけたい」

北京、上海、ウィーンと国際的に活躍中です。「日本は第二の祖国です。微力ですか日中の末永い友好のために力を尽くしたい」


                                                                         文・写真 西口 友紀恵