「朝日新聞」

            2000.4.19.

 

レンズで描いた「水墨画」

日本在住の中国人写真家汪さんが個展  6月18日まで都写真美術舘

 

ウィーン美術史博物館で、アジアとして初めて個展を開いた日本在住の中国人写真家、汪蕪生さんの写真展が、目黒区にある恵比寿ガーデンプレイスの都写真美術館で開かれている。会場には、水墨画のような風景約六十点が展示されている。

汪さんは一九八一年に留学生として来日し、以後日本を拠点に活動している。「自然の力を借りで自分の気持ちを表現している」という作品は、モノクロで、水墨画と見まがうような世界。故郷中国安徽省の景勝地、黄山を見て、人生観が変わるほどの衝撃を受け、その感動を伝える方法を、と試行錯誤の末たどり着いた表現方法だという。

オーストリアの美術館で九七年、山がテーマの企画展があった。ウィーン美術史博物館のウィルフリード・サイペル館長が、出展されていた汪さんの作品にひかれ、同博物館での個展が実現した。

今回は、ウィーンでの展示作品に加え、ヨーロッパで撮った写真や、昨年夏に和歌山県の自然を撮影した作品も展示している。

汪さんは「カラー写真は美しいが、見る側の想像力の幅を狭める。大事なことは、見る側に想像させること。これからももっと新しい作品をつくっていきたい」と話す。六月十八日まで。