《日経アート》 

            1998.09.

 

ウィーンで

「天上の山々」をとらえた

汪蕪生(ワンウーシェン)の写真展

 

ウィーン美術史博物館の主催で日本在住の中国人写真家、汪蕪生 (ワンウーシェン) 氏の個展「天上の山々」が5月20日から8月9日までウィーン市内のハラッハ宮殿で開催され、市民の間で絶賛された。展示は汪氏が75年以来、撮り続けている黄山の風景写真65点。山水画の原点といわれる標高1000〜2000メートルの山々と雲海が織りなす幻想的な光景だ。

汪氏は81年に日本に留学して以来、東京を拠点に活動を行っている。昨年、オーストリアの美術館、クンストハウス・クレムスで開催された山をテーマにした企画展に出展した際、美術史博物館館長の目に留まり、同館初めての写真展開催の運びとなった。

会場には「汪氏がここで取り上げているのは自然の外観ではない。彼が心の中に描いている風景や感情を自然の中に表現している」と説明があり、来場者は息を殺して作品に見入っていた。


                                                                   [日本経済新聞ウィーン支局小笠原正佳]