「東京新聞」夕刊

             1998.05.09.

 

東洋の“気”を欧州に

汪蕪生さん
ウィーン美術史博物館で『山水写真展』

中国の伝統美術、山水画は日本でも人気だが、これを写真で表現した汪蕪生さんの作品展「天上の山々」が、二十日から八月九日まで、ウィーン美術史博物館(ハラッハ宮殿)で開かれる。同館はオーストリアの旧帝室、ハブスブルグ家のコレクションを中心にした世界的に有名な総合博物館で写真展ばかりでなく、東洋人の展覧会の開催も初めてという。

汪さんは中国・安徽省生まれ、十七年前から日本在住。李白が詠(よ)んだこともある故郷の黄山を中心に自然の美しさをテーマにした独特の“山水写真”で多くのファンを持ち、「黄山神韻」などの作品集のほか、日本でも何度か個展を開いている。

昨年、ウィーン郊外の美術館で開いた「荘重な山々―内なる山々」展を見たサイペル館長が感動し「ぜひうちでも開きたい」ということから、今度の展覧会が実現した。

「東洋の神聖な″気″を伝えたい」と汪さん。「陰と陽」「静と動」「天と地」「輪廻(りんね)」の四コーナーに展開されるモノクロ七十点。東洋の思想や宇宙観が、中国から日本を越えてヨーロッパに広がる−。