「朝日新聞」 

1993.04.20.

 

「東洋の美」 すくい取る

中国の黄山の奇観 撮り続けて20年

墨田区在住の元留学生 汪さんが写真展

 

仙人が住む山と言われ、奇観で有名な中国・安徽省の黄山に魅せられた元日本留学生で墨田区在住の中国人写真家、汪蕪生(ワン・ウーシェン)さん(四六)が、二十日から日本橋三越本店で写真展「黄山神韻」を開く。自ら「山水写真」と命名して自然保護の願いを託した作品はモノクロ、カラーから屏風(びょうぶう)、CD映像まで約百五十点。売り上げの一部は黄山保護のため寄付することにしている。

汪さんは黄山のおひざ元、安徽省蕪湖市の生まれ。地元の大学で物理を専攻し、卒業後、新聞社などのカメラマンとして活躍した。

七二年、取材で黄山を訪れた。自然が織りなす美しさに圧倒された。以来、三五_カメラを三脚に載せての黄山撮影がライフワークになった。何回も泊まり込みで山にこもった。


自然保護の思い込め 

                   きょうから日本橋で世界巡回展めざす

気に入った雲や霧、かすみがかかる決定的な瞬間を狙った。標高は一、八〇〇〇〇bしかないが、四季を通じ、雲と霧が多く、場面が瞬時に千変万化することでも知られる。

八一年、汪さんは、木格的に写真を学ぶため国際交流基金の研究員として日大芸術研究所などで研修を受けた。八六年からは、東京芸大で美術を学んだ。帰国後も黄山にこもり、作品は中国でも写真集として出版され、数々の写真コンクールに入賞した。東山魁夷画伯など各界著名人から絶賛されている。

黄山を撮り続けて二十年。今回の作品展ではこの数年間に撮影した中から厳選したモノクロ、カラーなど百五十点を披露する。特製の屏風七双も展示される。

モノクロ写真は、マンション自室を暗室に改造し、自分で引き伸ばした。自分で納得がいくまで印画紙に焼き込んだという。

汪さんは「私の作品を通して東洋の美を見直してもらいたい。そして、この東京を皮切りに、中国、アメリカ、ヨーロッパでも写真展を開催したい」といっている。

同展は二十五日まで。入場無料。