「毎日新聞」

1993.04.18


汪蕪生  山水写真展

「黄 山 神 韻」

 

山水画の魂を、写真によって再現する写真家・汪蕪生(ワン・ウーシェン)さんが20年にわたり撮り続けた中国の霊峰・黄山(安徽省)の作品が、展示される。西洋絵画のリアリズムとは対照的な東洋の山水画。その幻想的な作風にも似た、神秘的な写真展だ。

汪さんが、黄山に魅了されたのは、1974年。地元でカメラマンをしていた当時、仕事で偶然訪れたことがきっかけだった。山水画のモデル地になることの多い黄山は、千変万化な景観を見せる山として世界的にも有名で、そのあまりの美しさに心ひかれたようだ。

東洋人の美意識、絵画に対する価値観に多大な影響を与えた「山水画」。彼は、この事実を前提に、写真に心の芸術〃を求めた。山水の描写を、西洋的な忠実に再現するだけの風景写真とは全く異質のものとしてとらえ、作品には己の魂までも吹き込んでいる。

奇々怪々な峰に繁茂する老松、それを飲み込むかのように巻き付く霧や雲。「山水写真」と自ら名付けたこれら作品群は、写真にして「山水画」以上に心打つプリントばかりだ。

作況展ではパネルのほか、屏風や垂れ幕などにした写真、計103点を展示。また今回、はじめてカラープリントによる作品も出展する。色を得た『山水』がどのようなものなのか興味深い。期間中、池田満寿夫氏らを迎えてトークショーも開催。汪蕪生さんの世界が十分たん能できる6日間だ。


▼4月20日(火)〜25日(日)までの10時〜18時30分 期間中無休 入場無料

▼三越日本橋本店(会場は、1F中央ホールと6Fアールクリオギャラリー)(03・3241・3311