アサヒカメラ

1989.01.


黄山幻幽――汪蕪生

 

中国の黄山は高さこそ1800メートルとそれほどではないが、安徽省南部154平方キロの広大な地域にわたり、主峰72峰をめぐらす。奇岩林立、その岩肌には老松繁茂し、山々をはうように雲霧は生動して千変万化の姿を見せる。

広西省桂林の自然は近時、日本人の間にも「山水画のふるさと」として名高いが、黄山の景勝はそれにもまして中国山水画の原点を浮かび上がらせる。

著者は1974年以来、黄山と取り組み、78年から『人民日報』『中国画報』などに作品を発表、81年初来日。83年には短期留学のために再来日。84年十分な準備のもとに再び一年間、黄山を徹底取材した。

開巻劈頭から、思わず息をのむような迫力あふれる導入部の作品群がつらなり、次に“黄山三奇”と称される「松」「岩」「雲」の三主題に従って、その神秘な全容を展開する。

祖国の名山を愛する渾身の情熱が画面からよく伝わって見事。巻末、森本哲郎の「黄山紀行」の文も読ませる。