《日本カメラ》

 1988.10.

口絵ノート

汪蕪生――黄山幻幽

 

黄山は中国安徽省の揚子江南部に位置し「天下の第一の奇山」「水墨山水画のふるさと」といわれている。百五十四平方キロを占める黄山風景区という区域には、数百の奇々怪々な峰々が密集しており、名の付けられている峰だけでも七十二に峰ある。ということは二平方キロ毎に一つ大きな峰が聳えているわけで、その中でも蓮花峰は一八七三メートルと最も高い。

今から百万年前の氷河の侵食作用、そしてその後の風化作用によって、これらの山は俄然異なった風貌をもつにいたった。まるで自然という巨匠が精魂を傾けて彫刻した絶妙な芸術品である。

一九七四年、私は初めて黄山と出会ったが、見た瞬間に心を強く打つものがあった。その時、黄山の撮影を一生のライフワークにしようと心に誓い、以来十七年間撮りつづけてきた。これからも、死ぬまで黄山を撮りつづけていきたいと思っている。