小山五郎(三井住友銀行名誉顧問)

1994.04.09. 日本橋三越本店《黄山神韻》展



ご挨拶より

小山五郎(汪蕪生山水写真巡回展実行委員会委員長)

 

中国を代表する名山・黄山を撮り続けている汪蕪生氏は、東洋的な自然観・宇宙観を作品に反映し、写真界に山水写真という新しい表現スタイルを生み出しました。
 
彼のモノクローム作品は、観る者の遠い記憶を呼び覚ますような不思議な郷愁に溢れ、それは単に日本文化が山水画の影響を受けたという歴史的な背景ばかりでなく、東洋人としての伝統が現代に生きる私達に受け継がれていることのひとつの証なのかも知れません。
 
私達日本人が富士山を眺めて様々な感慨を覚えるように、「黄山」は中国の人々にとって特別な想いを抱かせる山だと言われています。  

千変万化の黄山をアートフルに表現した山水写真は、多忙な日々をおくる現代の日本人にとっても究極の理想郷であると言えましょう。世界のあちらこちらで環境問題がとりあげられている今、汪氏の作品は「山紫水明」の意味深さを伝えてくれます。来日して以来、様々な苦難を乗り越えながら、日本各界の御支援により大きく育てられた汪蕪生氏を、皆様に御紹介できることを大変嬉しく思います。